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neuertag’s blog

映画、音楽、哲学、アイドル文化を中心に思うところを綴っていきます。

団地と川とアイドルのいる風景 ~My Days for You~

最近、映画やTVドラマで注目されつつある「真野ちゃん」こと真野恵里菜が気になり、彼女がハロプロ時代のMVを手当たりしだいに観ている。とりわけ気に入ったのが「My Days for You」だ。ロケ地は、多摩川住宅というマンモス団地である。ここは、特徴的な形の給水塔で知られており、MVにも、中ほどがくびれた細長い杵のような形状の給水塔が現れる。直径が数メートル、高さが数十メートルにも及ぶ巨大なコンクリート製の建造物だ。

MVでは、丈の長いロングドレス風のワンピースに首からカメラをぶら下げた真野ちゃんが、団地の中を被写体をもとめて歩いていくという設定である。先の給水塔は、映像の冒頭から末尾にかけて何回か現れるし、給水塔の他にも、住宅棟、公園の遊具、公園を走り抜ける子供、近くを流れる多摩川の風景なども現れる。

私のような昭和の高度成長期に生まれた世代にとって、団地の風景は子供のころの原風景でありノスタルジーを禁じえない。高層住宅や給水棟といった巨大な建物にかこまれて、小さな彼女がポツンと公園の遊具に座っていたりする。そんな風景を見るとき、自分が少年の頃、恋心を抱いていた転校生の女の子を、団地の公園で偶然に見つけたときのような、切なく淡い想いが甦ってくる。映像の当時の真野ちゃんは、童顔でぽっちゃりして、真っ直ぐな目をしており、「少年の頃の憧れの少女」という印象さながらに、団地という日常風景のなかに自然に溶け込んでいるのだ。

高い青空には白い雲が浮かび、空間全体が透明な光に満ちている。午後のゆったりと流れる時間に寄り添って、彼女の歌声が流れていく。何とも幸福感にみちた時間である。MVの最後のほうでは、彼女が多摩川の岸辺を歩いていくシーンもあるが、光に満ちた空を背景に何か神々しくも清々しい空気を感じさせる。歌詞のなかに「太陽の階段」という言葉が出てくるが、この映像から受ける印象そのものである。

真野ちゃんのような自然体の美少女は、私と同世代の昭和の少年たちにとっては、記憶の中に生き続けている永遠の初恋そのものなのだ。このMVは、昭和の原風景としての団地の空間に、真野ちゃんという現代のアイドル少女を放り込んで、観るものを一気にタイムスリップさせる効果を見事に実現している。彼女の歌う「信じる心に咲く花」とは、昭和の少年たちの心に生き続けている永遠の少女であり、それを体現しているのが真野恵里菜なのである。